民法改正により、以下の点が改正されました。
1.相続開始前の財産処分についての取扱い
民法906条の2の新設により、たとえ相続開始前の財産の処分についても、共同相続人の同意があれば、その財産は遺産に含めることができるようになりました。この条項では、その処分した人は相続人にア限られません。
2.仮払い制度の創設
民法909条の2の新設により、相続開始後、法定相続分の3分の1までであれば、相続完了後でなくても、預貯金を引き出せるようになりました。親族の死亡後でも支払いが必要なもの、例えば死亡前後の治療費用、祭祀に必要な葬儀費用など、相続開始後にもあれこれ費用が必要ですよね。
相続開始時では、従来預貯金の払い戻しについては遺産分割終了まで相続人には払い戻さない、いわゆる「口座凍結」という措置が(当然のように)行われました。金融機関では半ば慣例のようでしたが、民法改正により大きく変更されそうです。
3.配偶者居住権の新設
今回の民法の改正により、夫の自宅が遺産評価から控除することができるようになりました。
これにより所有権とは別に居住権が新たに発生し、預金も妻の取り分が残ることができます。
ただし、これには要件があります。
②遺言により夫が妻に遺贈していること。
配偶者居住権は、配偶者に無償で長期の使用収益権を認める一方、配偶者居住権を財産の一部として相続財産を構成しますが、では具体的にその財産評価をどう算定するべきかは今後の法令整備を待たねばなりません。
※この制度について詳細はこちら。

相続のご相談で最も多いのが「遺産分割協議書」の書き方についてです。

さて、遺産分割協議書とは?改めてご説明しましょう。
相続手続きをするには必ず遺産分割協議書が必要であるわけではありません。
例えば相続人が一人であれば、そもそも協議する相手さえいませんから遺産分割協議書は不要です。
また、特定の相続人(例えば長男)にすべて相続させることでまとまっている(改めて協議の必要がない)のであれば、協議書ではなく、同意書でもよいのです。この場合、「以下の財産を○○に相続させることに同意します」という内容の同意書を他の相続人全員一人一人が作成すればいいのです。
◎協議書と同意書の違い
協議書の形式とは、相続人全員が集まり、相続の内容について協議して話がまとまったことを記載するものですから、相続人全員が同じ協議書に署名捺印する必要があります。相続人が多数となり集まる日時を合わせるが大変・・・というのであれば、同意書を各相続人に送付し、署名捺印の上送ってもらえれば、少し手間がかかりますが、便宜的です。要は、相続人全員が納得していることを証する書類であれば協議書であっても同意書であってもかまわないのです。
◎協議書の様式
協議書の書き方については、大勢の先生方が各webサイトで解説しております。
改めて触れる必要はないかもしれませんが、まずは基本的なところから。
①相続関係
・冒頭に被相続人の死亡年月日と本籍地を必ず書く。
・相続関係説明図を作っておく。
被相続人の死亡年月日と本籍地は必須です。また、相続関係説明図を作るのは、後で申し上げますが、金融機関等に対しての手続については、金融機関独自の様式があることが多く、そこには相続関係説明図を作成するように求められるため、不動産の相続登記の際に相続関係説明図を添付すると戸籍謄本等が還付されるからです。
②誰が、どのような財産を相続するのかを明確にする。
・相続財産については、それが特定できるように正確に書きましょう。例えば、銀行口座については、「銀行名・支店名・口座名」まで、不動産については登記簿通りを正確に書きましょう。○○市内の土地全部、とかも曖昧な書き方で認められません。例えば土地であれば、「所在・地番・地目・地積・(持分)」までです。ただし、残高や評価額まで書く必要はありません。
・財産は負債も同様に相続。
・財産がたくさんあるなら、財産目録を作成。この方がわかりやすくなります。
③その他
・葬祭費用、相続費用、その他建て替えている費用は相続財産から外す→相続財産から清算できます。
・今後新たな財産が出てきた場合に改めて遺産分割協議をする必要をなくすために、その財産について誰が相続するのかを記載しておく。
・最後に住所と署名捺印(必ず実印)。数枚に及ぶときには契印、捨印も忘れない。
・・・それでは下記に遺産分割協議書の記載例をご紹介します。ただし、一般的な例ですので、必要に応じて変えてください。個別具体的な記載方法で迷った、わからない等あれば、行政書士等の専門家へ!!
遺産分割協議書
被相続人徳川家康(元和2年2月27日死亡 本籍東京都千代田区千代田1丁目1番1号)の遺産につき、その相続人全員の協議の結果、以下の通り遺産を分割し、取得することに決定した。
第1条相続人全員は、被相続人徳川家康の遺産が別紙遺産目録記載の通りであることを確認する。
第2条徳川秀忠が遺産目録第1、第2、第3、第4、第5を取得する。
第3条徳川秀忠は、第2条に記載の遺産を取得する代償として、徳川頼宣に対して、元和2年4月末日限り金○○○万円を支払う。
第4条遺産目録記載の遺産につき、被相続人の死亡日から本日までの間に発生した費用または果実については、徳川秀忠が費用を負担または果実を受領する。
第5条遺産承継のための手続及び代償金支払いにかかる費用は徳川秀忠が負担する。
第6条相続人全員は、以上の他に互いに何らの債権債務のないことを確認する。
また、被相続人に属する金融資産その他の遺産が見つかった場合は、徳川秀忠が取得する。
以上の通り協議が成立したので、これを証するため相続人全員が次に署名押印した本協議書2通を作成し、各相続人において、各1通を所持するものとする。
元和2年4月13日
住所 東京都千代田区千代田1丁目1番1号
(相続人)徳川秀忠 ㊞
住所 和歌山県和歌山市一番丁1番地
(相続人)徳川頼宣 ㊞
(別紙)
被相続人 徳川家康 遺産目録
第1 土地(不動産番号 ・・・・)
東京都千代田区千代田1丁目 1番1 宅地 10,000.45㎡
第2 建物(不動産番号 ・・・・)
東京都千代田区千代田1丁目1番1号 1番地1 居宅
木造瓦葺4階建 1F ・・・㎡ 2F ・・・㎡ 3F ・・・㎡ 4F ・・・㎡
第3 預貯金(1~4)
1 通常 ゆうちょ銀行 千代田支店 12345-1234567
2 普通 江戸銀行 本店営業部 123456
3 定期 東京中央銀行 中央営業部 987654
4 普通 京都中央銀行 伏見支店 031425
第4 株式(1~3)
1 角倉証券 駿河屋株式会社 100株
2 後藤証券 株式会社茶屋 1,000株
3 亀屋証券 末次株式会社 100株
第5 自動車
自動車車体番号 |
車台番号 |
車名 |
形式 |
原動機の形式 |
東京 30 1192 |
TG1‐1600 |
トヨタ |
TG-GD8 |
Z13A |
ちなみに、押印は実印です。花押を書いても無効ですので(笑)。
神山和幸行政書士事務所(073-460-5478)
和歌山県和歌山市
相続・遺言・成年後見