タグ:相続
不在住・不在籍の証明書
皆さんは「不在住・不在籍の証明書」を耳にしたことがあるでしょうか?
相続の手続をするには、被相続人の出生から死亡までの戸籍を揃えて、戸籍の附票を揃え、不動産の権利証で、その不動産は被相続人が所有者であったことを証明します。
ところが、この「戸籍の附票」が、自治体によっても異なるのですが、大体5年~10年以上経つと破棄されてしまいます。それでは、権利証に記載されている住所が被相続人のものなのか証明することが難しくなります。
そこで、苦肉の策として、「不在住・不在籍の証明書」を添付します。
これは、「権利証に記載された住所・氏名・本籍と一致する該当者は存在しません 」ということを証明する書類となります。それを「反対証明」といい、一件でもその住所・氏名・本籍に該当する方がおられる場合は発行できません(同一人物ではない別の人物が存在しているため)。これを相続登記時に添付することにより、相続登記が可能となります。
ただし、相続人の上申書も添付しなければなりません。
上申書の内容は簡略に言うと「被相続人と権利書上が同一人物であることを疎明する書類がないが、同一人物であることを上申します。今後いかなる紛争が起きても登記所にはご迷惑をおかけすることはありません」という内容です。
神山和幸行政書士事務所(和歌山県和歌山市)
電話073-460-5478
「海外在住者の相続」
Q.私の父が亡くなり、遺産分割することになりました。弟が海外に住んでいます。分割内容については口頭で同意を得ているのですが、手続はどうすればいいでしょうか?
A.海外に在住している(日本国籍を有する)人が相続人である場合の手続についてのご質問です。
遺産分割協議は、相続人全員が話し合ったことを記載し、署名と実印の押印をし、遺産分割協議書を作成することで完了します。実印であることの証明として、印鑑証明書の添付を、不動産登記や自動車の名義変更、預貯金や株式の名義変更などで要求されています。
ところが、海外に移住し、日本の住民登録を抹消してしまいますと、印鑑登録も抹消となります。
こんな場合、住民票に代わるものとして「在留証明書」、印鑑証明書に代わるものとして、「署名証明」を取得する必要があります。
在留証明書、署名証明の取得については次の通りです。
①取得(発給条件)・・・日本国籍を有すること。在留証明書には、「現地にすでに3か月以上滞在し、現在居住していること」という条件があります。
※すでに日本国籍を失い、他国籍となった方でも、失効した日本国旅券や戸籍謄本などがあれば、発給されることがありますが、その場合は在外公館に問い合わせる必要があります。
②必要書類・・・パスポート(日本国旅券)。滞在開始時期を確認できる書類(賃貸借契約書、公共料金の請求書など)。
③手続について・・・在外公館(領事館)に自ら赴いて行います。相続手続で要求されている形式は、「在外公館が発行する証明書と、申請者が領事の面前で署名した私文書をつづり合わせて割り印を行う」形式です。
※海外にお住まいの方とのやりとりですから、相当な時間がかかることは覚悟しておいて下さい。 なお、海外にいるからといって、国内の相続人のみで、遺産分割協議はできません。ただし、連絡先さえ分からなくなっている場合、行方不明者だと裁判所への申し立てることができる場合があります。
在日韓国人の相続について。
何度か経験しましたが、国籍が韓国にある相続人の場合、ご注意いただきたいのは、戸籍の違いです。
また、「いつの法律が適用されるのか」にもご注意いただきたいです。
ちなみに、韓国では戸籍制度は廃止され、『基本証明書』、『家族関係証明書』、『婚姻関係証明書』、『入養関係証明書』、『親入養関係証明書』の5種類に代わっています。
神山和幸行政書士事務所(和歌山県和歌山市)
電話 073-460-5478
未登記建物の相続について
相続財産の中で、「未登記の建物」をたまに見受けます。
未登記の建物はそもそも相続可能なのでしょうか?
未登記の建物も相続の対象にはなります。
建物を建てたのだけれど。登記はしていない。その場合はまず「未登記の建物」として遺産分割協議書に盛り込みます。その後、固定資産税の納税義務者として、その建物管轄の市町村役場に届け出ます。それにより、相続人は固定資産税納税者となります。
ですが、そのままでは手続きが終わったとは言えません。
登記上はまだ誰も「所有者」として公示されないので、まず「相続財産」として存在するための登記を行います。それを「建物の表示登記」といいます。未登記建物は厳密にいうと、まだ世の中に存在していない物となるためです。
表示登記は、土地家屋調査士に依頼します。
一般的にまず測量を行い、図面を作成します。
表示登記が完了すると、晴れて「存在する建物」として公示されます。
次に、「所有権保存登記」を行います。それは司法書士に依頼します。
細かいことですが、相続原因ではありながら、「所有権移転登記」ではありませんので、ご注意下さい。
まとめ「未登記建物の相続手続」
①遺産分割協議書にて、未登記の建物を相続する人を特定し、記載する。
②その建物の存在する市町村に届け出る。
③表示登記をする(土地家屋調査士)。
④所有権保存登記をする(司法書士)。
なお、上記③④はご自身でできなくもないですが、専門家に依頼する場合は、その専門家にご注意ください。当事務所では提携の専門家をご紹介させていただきます。
神山和幸行政書士事務所(和歌山市)
電話073-460-5478
先日のご相談
先日、兄弟姉妹間の相続について相談がありました。
姉(90)(配偶者、子ともになし)が余命いくばくもなく、その他の兄弟姉妹6人が姉の生活費の工面等で、以前から姉に「家と土地を売ってもよいので」と言われました。
病院より「余命3か月」と告知されており(姉にはその告知はされていません)、家を処分するための委任状を作成すべきか、遺言を作成してもらうべきか、本人(妹)は悩んでいるそうです。
委任状を取り、土地と家屋を処分してそれを姉の治療費、あるいは兄弟姉妹間で分けるべき(そのためには姉に別段の意思表示が必要)なのか、結論としてはその方向で進めていただくのですが、すぐに土地・家屋が売れるわけではなく、その間に姉が死去すれば、委任した本人は死亡するので、委任は無効となります。
一方、遺言は姉自身の意思が必要なので、不用意に本人が姉に遺言を書くように勧めて姉が拒否するかもしれません。
姉が遺言を書かないまま死亡すると、通常は姉を被相続人とする相続が開始されてしまいます。
このような申し上げ方は甚だ不謹慎ではありますが、それを承知の上で申し上げると、「時間との闘い」ということになります。
神山和幸行政書士事務所
和歌山県行政書士会所属
電話(073-460-5478)