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「海外在住者の相続」
Q.私の父が亡くなり、遺産分割することになりました。弟が海外に住んでいます。分割内容については口頭で同意を得ているのですが、手続はどうすればいいでしょうか?
A.海外に在住している(日本国籍を有する)人が相続人である場合の手続についてのご質問です。
遺産分割協議は、相続人全員が話し合ったことを記載し、署名と実印の押印をし、遺産分割協議書を作成することで完了します。実印であることの証明として、印鑑証明書の添付を、不動産登記や自動車の名義変更、預貯金や株式の名義変更などで要求されています。
ところが、海外に移住し、日本の住民登録を抹消してしまいますと、印鑑登録も抹消となります。
こんな場合、住民票に代わるものとして「在留証明書」、印鑑証明書に代わるものとして、「署名証明」を取得する必要があります。
在留証明書、署名証明の取得については次の通りです。
①取得(発給条件)・・・日本国籍を有すること。在留証明書には、「現地にすでに3か月以上滞在し、現在居住していること」という条件があります。
※すでに日本国籍を失い、他国籍となった方でも、失効した日本国旅券や戸籍謄本などがあれば、発給されることがありますが、その場合は在外公館に問い合わせる必要があります。
②必要書類・・・パスポート(日本国旅券)。滞在開始時期を確認できる書類(賃貸借契約書、公共料金の請求書など)。
③手続について・・・在外公館(領事館)に自ら赴いて行います。相続手続で要求されている形式は、「在外公館が発行する証明書と、申請者が領事の面前で署名した私文書をつづり合わせて割り印を行う」形式です。
※海外にお住まいの方とのやりとりですから、相当な時間がかかることは覚悟しておいて下さい。 なお、海外にいるからといって、国内の相続人のみで、遺産分割協議はできません。ただし、連絡先さえ分からなくなっている場合、行方不明者だと裁判所への申し立てることができる場合があります。
在日韓国人の相続について。
何度か経験しましたが、国籍が韓国にある相続人の場合、ご注意いただきたいのは、戸籍の違いです。
また、「いつの法律が適用されるのか」にもご注意いただきたいです。
ちなみに、韓国では戸籍制度は廃止され、『基本証明書』、『家族関係証明書』、『婚姻関係証明書』、『入養関係証明書』、『親入養関係証明書』の5種類に代わっています。
神山和幸行政書士事務所(和歌山県和歌山市)
電話 073-460-5478
未登記建物の相続について
相続財産の中で、「未登記の建物」をたまに見受けます。
未登記の建物はそもそも相続可能なのでしょうか?
未登記の建物も相続の対象にはなります。
建物を建てたのだけれど。登記はしていない。その場合はまず「未登記の建物」として遺産分割協議書に盛り込みます。その後、固定資産税の納税義務者として、その建物管轄の市町村役場に届け出ます。それにより、相続人は固定資産税納税者となります。
ですが、そのままでは手続きが終わったとは言えません。
登記上はまだ誰も「所有者」として公示されないので、まず「相続財産」として存在するための登記を行います。それを「建物の表示登記」といいます。未登記建物は厳密にいうと、まだ世の中に存在していない物となるためです。
表示登記は、土地家屋調査士に依頼します。
一般的にまず測量を行い、図面を作成します。
表示登記が完了すると、晴れて「存在する建物」として公示されます。
次に、「所有権保存登記」を行います。それは司法書士に依頼します。
細かいことですが、相続原因ではありながら、「所有権移転登記」ではありませんので、ご注意下さい。
まとめ「未登記建物の相続手続」
①遺産分割協議書にて、未登記の建物を相続する人を特定し、記載する。
②その建物の存在する市町村に届け出る。
③表示登記をする(土地家屋調査士)。
④所有権保存登記をする(司法書士)。
なお、上記③④はご自身でできなくもないですが、専門家に依頼する場合は、その専門家にご注意ください。当事務所では提携の専門家をご紹介させていただきます。
神山和幸行政書士事務所(和歌山市)
電話073-460-5478
遺産分割協議書について(改正情報あり)
民法改正により、以下の点が改正されました。
1.相続開始前の財産処分についての取扱い
民法906条の2の新設により、たとえ相続開始前の財産の処分についても、共同相続人の同意があれば、その財産は遺産に含めることができるようになりました。この条項では、その処分した人は相続人にア限られません。
2.仮払い制度の創設
民法909条の2の新設により、相続開始後、法定相続分の3分の1までであれば、相続完了後でなくても、預貯金を引き出せるようになりました。親族の死亡後でも支払いが必要なもの、例えば死亡前後の治療費用、祭祀に必要な葬儀費用など、相続開始後にもあれこれ費用が必要ですよね。
相続開始時では、従来預貯金の払い戻しについては遺産分割終了まで相続人には払い戻さない、いわゆる「口座凍結」という措置が(当然のように)行われました。金融機関では半ば慣例のようでしたが、民法改正により大きく変更されそうです。
3.配偶者居住権の新設
今回の民法の改正により、夫の自宅が遺産評価から控除することができるようになりました。
これにより所有権とは別に居住権が新たに発生し、預金も妻の取り分が残ることができます。
ただし、これには要件があります。
②遺言により夫が妻に遺贈していること。
配偶者居住権は、配偶者に無償で長期の使用収益権を認める一方、配偶者居住権を財産の一部として相続財産を構成しますが、では具体的にその財産評価をどう算定するべきかは今後の法令整備を待たねばなりません。
※この制度について詳細はこちら。

相続のご相談で最も多いのが「遺産分割協議書」の書き方についてです。

さて、遺産分割協議書とは?改めてご説明しましょう。
相続手続きをするには必ず遺産分割協議書が必要であるわけではありません。
例えば相続人が一人であれば、そもそも協議する相手さえいませんから遺産分割協議書は不要です。
また、特定の相続人(例えば長男)にすべて相続させることでまとまっている(改めて協議の必要がない)のであれば、協議書ではなく、同意書でもよいのです。この場合、「以下の財産を○○に相続させることに同意します」という内容の同意書を他の相続人全員一人一人が作成すればいいのです。
◎協議書と同意書の違い
協議書の形式とは、相続人全員が集まり、相続の内容について協議して話がまとまったことを記載するものですから、相続人全員が同じ協議書に署名捺印する必要があります。相続人が多数となり集まる日時を合わせるが大変・・・というのであれば、同意書を各相続人に送付し、署名捺印の上送ってもらえれば、少し手間がかかりますが、便宜的です。要は、相続人全員が納得していることを証する書類であれば協議書であっても同意書であってもかまわないのです。
◎協議書の様式
協議書の書き方については、大勢の先生方が各webサイトで解説しております。
改めて触れる必要はないかもしれませんが、まずは基本的なところから。
①相続関係
・冒頭に被相続人の死亡年月日と本籍地を必ず書く。
・相続関係説明図を作っておく。
被相続人の死亡年月日と本籍地は必須です。また、相続関係説明図を作るのは、後で申し上げますが、金融機関等に対しての手続については、金融機関独自の様式があることが多く、そこには相続関係説明図を作成するように求められるため、不動産の相続登記の際に相続関係説明図を添付すると戸籍謄本等が還付されるからです。
②誰が、どのような財産を相続するのかを明確にする。
・相続財産については、それが特定できるように正確に書きましょう。例えば、銀行口座については、「銀行名・支店名・口座名」まで、不動産については登記簿通りを正確に書きましょう。○○市内の土地全部、とかも曖昧な書き方で認められません。例えば土地であれば、「所在・地番・地目・地積・(持分)」までです。ただし、残高や評価額まで書く必要はありません。
・財産は負債も同様に相続。
・財産がたくさんあるなら、財産目録を作成。この方がわかりやすくなります。
③その他
・葬祭費用、相続費用、その他建て替えている費用は相続財産から外す→相続財産から清算できます。
・今後新たな財産が出てきた場合に改めて遺産分割協議をする必要をなくすために、その財産について誰が相続するのかを記載しておく。
・最後に住所と署名捺印(必ず実印)。数枚に及ぶときには契印、捨印も忘れない。
・・・それでは下記に遺産分割協議書の記載例をご紹介します。ただし、一般的な例ですので、必要に応じて変えてください。個別具体的な記載方法で迷った、わからない等あれば、行政書士等の専門家へ!!
遺産分割協議書
被相続人徳川家康(元和2年2月27日死亡 本籍東京都千代田区千代田1丁目1番1号)の遺産につき、その相続人全員の協議の結果、以下の通り遺産を分割し、取得することに決定した。
第1条相続人全員は、被相続人徳川家康の遺産が別紙遺産目録記載の通りであることを確認する。
第2条徳川秀忠が遺産目録第1、第2、第3、第4、第5を取得する。
第3条徳川秀忠は、第2条に記載の遺産を取得する代償として、徳川頼宣に対して、元和2年4月末日限り金○○○万円を支払う。
第4条遺産目録記載の遺産につき、被相続人の死亡日から本日までの間に発生した費用または果実については、徳川秀忠が費用を負担または果実を受領する。
第5条遺産承継のための手続及び代償金支払いにかかる費用は徳川秀忠が負担する。
第6条相続人全員は、以上の他に互いに何らの債権債務のないことを確認する。
また、被相続人に属する金融資産その他の遺産が見つかった場合は、徳川秀忠が取得する。
以上の通り協議が成立したので、これを証するため相続人全員が次に署名押印した本協議書2通を作成し、各相続人において、各1通を所持するものとする。
元和2年4月13日
住所 東京都千代田区千代田1丁目1番1号
(相続人)徳川秀忠 ㊞
住所 和歌山県和歌山市一番丁1番地
(相続人)徳川頼宣 ㊞
(別紙)
被相続人 徳川家康 遺産目録
第1 土地(不動産番号 ・・・・)
東京都千代田区千代田1丁目 1番1 宅地 10,000.45㎡
第2 建物(不動産番号 ・・・・)
東京都千代田区千代田1丁目1番1号 1番地1 居宅
木造瓦葺4階建 1F ・・・㎡ 2F ・・・㎡ 3F ・・・㎡ 4F ・・・㎡
第3 預貯金(1~4)
1 通常 ゆうちょ銀行 千代田支店 12345-1234567
2 普通 江戸銀行 本店営業部 123456
3 定期 東京中央銀行 中央営業部 987654
4 普通 京都中央銀行 伏見支店 031425
第4 株式(1~3)
1 角倉証券 駿河屋株式会社 100株
2 後藤証券 株式会社茶屋 1,000株
3 亀屋証券 末次株式会社 100株
第5 自動車
自動車車体番号 |
車台番号 |
車名 |
形式 |
原動機の形式 |
東京 30 1192 |
TG1‐1600 |
トヨタ |
TG-GD8 |
Z13A |
ちなみに、押印は実印です。花押を書いても無効ですので(笑)。
神山和幸行政書士事務所(073-460-5478)
和歌山県和歌山市
相続・遺言・成年後見
相続Q&A(6)「遺産分割協議が成立するまでの賃貸収入」
何をする場合でも、他の相続人と一緒にという場面が多いし、さらに誰かが死んだらまた共有者が増えるとかなり難儀なことになります。
特に、賃貸収入があってそれを継続して持っていきたい、つまり売却できない不動産の相続の場合はどうすればいいのか?
賃貸収入があるビルオーナーなどの人はある程度考えておいたほうがいいでしょう。
家賃収入があるから共有で相続。持分の割合で家賃を按分して毎月受け取ることになります。
誰が家賃を受け取って配分するのか?
賃貸管理会社に委託していなかったのなら、オーナーとして誰かが代表して家賃を受け取ることになります。共有している人ごとに家賃を分けて振り込んでもらうとかは当然難しいですから。
その場合、一旦誰かの口座や手元に家賃がまるまる入るわけですから、その絡みで揉めることになりやすいリスクがあります。
2.相続の相続が起きたら?
全く予期していない、はっきり言えば他人が入ってくることになります。弟の奥さんが何も口を出すつもりがなくても、奥さん側の親族が口を出し始めるケースがあります。こうなるとドロドロになってきます。相続で揉めるケースは、直系ではなくて婚姻関係の血筋が登場してグチャグチャになることは多いです。
例えば家賃収入より売却してしまおうとかそういう提案が降って湧いたり。向こうさんサイドにお金に困っている人なんかいるとそんな話が生まれがちです。
相続した人の年齢にもよりますが、ある程度高齢だったら認知症になるリスクもあります。そうなると後見人をつけたりと、その不動産に関して何かするにも後見人の登場となります。そしてそこに至るまでの手間も費用もかかります。
不動産共有を避けるために取られる方法が法人化です。法人にしてしまえば、法人が解散しない限りは会社の相続という問題は起きないからです。
ただ株式会社の名義に不動産を移転すると、今度は株式の問題が出てきます。株も当然相続の対象なのですから、相続の問題を引きずる格好になります。
最初から個人名義ではなくて会社名義だった場合も、結局こっちの相続が問題になってくるでしょう。
最近流行りの方法はこっちです。一般社団法人というのは株主のような出資者がいません。なので株の相続という問題を引きづらなくて不動産を移動させることができます。
ただそのまま移転したのでは賃貸収入の行き先が法人のものになってしまうので、不動産を預けて運用管理させる信託契約を結びます。そして家賃収入はそれを受け取る権利として相続人同士で分け合います。
家賃の回収元は法人。相続分に応じて相続人の口座に家賃を振り込む。法人の理事になる相続人が死亡した場合のその地位の継承者・その決め方等は法人の定款で定めておく。
こんな感じで、不動産共有で相続人が一致している見解を法人に移転して固定化。これにより、揉めるポイントを避けつつ、将来の相続人の変化にも対応しつつ家賃収入を受け取ることができるというわけです。
亡くなった人が例えばワンルームマンション一室のオーナーだったようなケースなら、家賃収入の大きさも大したことはないでしょう。そのような場合まで法人設立してやるべきかどうかというのはまた考え方次第です。費用もかかりますし、法人のほうの管理もあります。
やはりある程度の家賃収入があったり、複数の不動産があってどうしても分けようがないのなら上記の対策方法を検討されはどうかと思います。
昔はどうしようかと悩んでどうしようもなくなあなあになり、結局お金のことで揉めるというケースが結構あったようです。こればっかりは遺言書でもカバーしきれないため、不動産オーナーの方は、相続人となる家族があまりあれこれとやり方の可能性を模索しないようにしてあげるのは一つの優しさであり、紛争予防となります。
相続で揉めるというのは、お金というものに引っ張られた故人から自分への愛情や関わりの強さの奪い合いの一面があるので、ちゃんと私は考えていたという形を残す方法としても検討できるでしょう。
6.社団法人以外の方法
他に「自動定額送金サービス」を利用して代表者と別途契約を結び、駐車場テナント料を折半する方法があります。このサービスは色々な金融機関が通常サービスとしてよく行われているサービスです。
具体的には以下の手順で行います。
①通常の遺産分割をする。
その際は公正証書にすることが望ましい。遺産分割の内容は代表相続人一人の相続とし、将来的な不動産収入について、固定資産税等必要経費は収入全体から控除した上で折半(あるいは分割割合を別途約定)しておく。
公正証書文案を検討する。
※私文書でも契約は成立するが、将来的に有力な証拠として残すためには公正証書が望ましい。私文書であっても2通作成し、実印を添付し印鑑証明書を添付する。
2通は双方が保存する。
⑤各金融機関にて所定の手続を行う。
神山和幸行政書士事務所(073-460-5478) 和歌山県和歌山市 相続・遺言